『できる人、採れてますか?―いまの面接でできる人は見抜けない』

言葉で嘘はつけても、行動で嘘はつけない。

この原則に従い、勝ち癖のある人材を見抜き採用するための面接手法「コンピテンシー面接」を紹介する本である。

現在の面接は、いわゆる「取得原価主義」に陥りがちである。すなわち、その人が積み重ねてきた学歴や成果を重視してしまうのである。しかし、我々が求めているのは、将来の収益をもたらす能力をもった人材である。そこに「取得原価主義」面接の限界がある。ここでは、いわば「DCF法」の考え方で人材を評価していくことが求められている。その方法を提供するのがコンピテンシー面接である。

コンピテンシーとは次の4つの要素

  • 知識経験
  • 成果イメージ
  • 思考力
  • モチベーション

を「具体的な行動」に変えていく能力である。具体的な行動こそが企業に利益をもたらす。いくらハイレベルな要素を備えていたとしても、具体的な行動が伴わない限り、それは無いのと同じなのだ。

より具体的なレベルでは、コンピテンシーとは「勝ち癖」が身についていることに他ならない。「勝ち癖」とは、plan-do-see-actionのサイクルである。仮説を立て、行動し、反省し、より高いレベルに移行して、それを繰り返すことができるか否か。こうしたレベルアップ思考が身についており、具体的な行動にまで結びついているか。そうしたところを「行動」からみていくのがコンピテンシー面接である。なぜこれを重視するかと言えば、これが「成果の再現性」につながるからだ。

我々の行動の成果の要因は、コントロール可能なものとコントロール不可能なものに分けられる。従来の面接は、要因ではなく成果のみにフォーカスしているが、それは危険である。ある人が成功したのはたまたま運がよかったせいかもしれないし、前任者の仕込が実ったせいかもしれない。つまり、「成果の再現性」がきわめて疑わしいのである。しかし、コントロール可能な要因にフォーカスするコンピタンシー面接では、その人がどういう行動で直面した問題に対処したのかを見る。こうすることにより、成果に惑わされずに勝ち癖が付いている人間なのかを見抜けるのである。

コンピタンシー面接は次のような流れで行われる。

  1. 取り組み課題・テーマの設定
    • 「学生時代にあなたが特に力を入れて取り組んだことは何ですか?」
  2. プロセスを時系列で確認→第一プロセスの特定
    • 「そのテーマに取り組むに当たって、あなたがまず一番初めにしたのはなんだったのですか?」
  3. 第一プロセスを具体化→過去の行動事例を引き出す
    • 「具体的な場面を思い浮かべてください。いつ、どこで、だれと、どのようにはじめましたか?」
  4. 行動事例の列挙・確認
    • 「その中であなたがとった具体的な行動はなんですか。その結果どのような成果を得ましたか」
  5. 第一プロセスでの工夫点・困難を乗り越えた点の確認
    • 「その場面で一番大変だったことは何ですか?」
    • 「その困難をあなたはどのように解決しましたか?」
    • 「その解決に当たって、何か独自の工夫はありますか?」
  6. 第二プロセス以下くりかえし

このようにしてコンピタンシーを洗い出していくのがコンピタンシー面接である。

洗い出されたコンピタンシーはどのように評価したらよいのだろうか。これには5段階のレベルがあるとされる。

  1. 部分的断片的行動(状況適応)
  2. やるべきことをやるべきときにやった行動(状況適応)
  3. 明確な意図や判断に基く行動(状況適応)
  4. 独自の工夫を加えた行動(状況変革)
  5. まったく新たなパラダイム変換を起こすような行動(状況変革)

今までの社会では、レベル3で十分だったし、レベル4以上の行動をする人はむしろ疎まれてきた。現代のように変化が激しい社会では、レベル4以上の人を採用しなければ、時代においていかれてしまうだろう。

ここできわめて重要な事実がある。「コンピタンシーのレベルはよほどのことが無い限りアップしない」、ということだ。レベル2の新入社員は、レベル2の部長にしかなれない。業務自体は高度化しているのに、行動特性が変わらないままでは、レベルは同じなのだ。

こうして考えると、就職活動を始める時点でもはや勝敗は決している、といっても過言ではない。

戦略的に就職活動を進めていきたい学生は本書を読むのも悪くないが、そもそも行動事実はもはや作りようが無いので、焦りを増すだけかもしれない。とりあえず、10年後の会社を作るという気概をもって採用活動に臨んでいる採用担当者は必読であろう。