キーワード削除投票システム案(「削除派バイアス」問題)。
もうひとつの問題点としては、投票する人は「相対的に」削除したい人が多くなること、があげられます。削除したい人は熱心に投票しますが、削除したくない人にはそれほど熱心に投票する意欲は無いので、結果的に削除派が有利になる、という問題です。
これを防ぐためには、
- 記名投票
などが有効とされますが、記名投票では「本来の意見」が反映されないという事態が起こりえます。それでは存続派に過度に有利な状況になってしまいます。(しかも、ルールの上では存続派がかなり有利なことに注意。→http://d.hatena.ne.jp/mitty/20040615#p1)
一方、匿名投票にすればそうした自体は避けられるのですが、今度は、匿名を隠れ蓑にした嫌がらせ投票が発生してしまいます。これはキーワードモデレーションシステムでも既におきていることです。例えば、「コメント求む:キーワードせっかく」などは文字列の性質上、誤爆可能性0であるにもかかわらずスコア50を切っています。匿名にすると、こうした特定の意見を持った層の意見があたかも全体の意志であるかのように錯覚されてしまうおそれがあります。
では、
- 匿名性を保ちつつ
かつ
- 特定層の関与を排除できる
ような仕組みは無いのでしょうか?
これに対するひとつの回答は、「陪審制」を導入することです。これは次のような概略をもつシステムです。
- キーワードの内容を理由とした削除提案は原則受け付けない(これは内容修正で対処すべきことで削除という手段は極力避けるべきだから。)。→参考:http://d.hatena.ne.jp/jouno/20040629#1088507600
- キーワードを削除予定に変更できるのは、現状どおりはてなダイアリー市民のみとする
- キーワードが削除予定に変更された場合、運営サイドに通知が行く。
- 運営サイドは削除提案されたキーワードを検討する。その際、規約違反・二重登録・誤表記については管理者権限において即時削除。そうでないものについては、「陪審員の召集→投票」フェイズへ移行。
- 投票は、はてなダイアリー評議会と同様のシステムにより、はてなダイアリー市民のうち、陪審員になることを賛同したものの中からランダムに選ばれたn人だけ投票可能とする
- nの大きさははてなダイアリー市民の数に応じて決める。現時点では、100〜300程度が適当であろう。
- 誰が陪審員であるかは原則非公開とする。
- 陪審員になったことにより逆恨みされたりするのを防ぐため。
- 投票期間は1週間とし、1週間経過後の投票結果により「存続」「削除」が自動的に決定される
- 投票期間中、現時点で合計何票投じられたかについては公開するが、どこに何票入っているかまでは公開しない。
- 定足数はnの三分の二とし、定足数に満たない場合は自動的に投票期間を1週間延長する。
- (「削除提案したキーワードが係争中のうちは新たな削除提案ができない」という制約と併用すると、可否が分かれるキーワードを削除提案してしまった場合にはかなり長い時間削除提案権を失うことに繋がるので、削除権の濫用を未然に防止できる。)
- キーワードが削除されるのは、「削除」票が有効投票数の過半数を占めた場合とする
- 「存続」票が50%以上を占めた場合、キーワードは存続し、向こう半年間は削除予定に変更ができない
ランダムサンプリングを行うことにより、
- 削除派→存続派の「組織票」によるキーワード防衛(例:アイドルグループ関係のキーワード)を阻止できる
- 存続派→ごく少数の削除派の意向により削除されてしまうという事態を防げる
ということになります。どちらにとっても悪い話ではないと思います。
「民意」に帰着させたいのならば、特定の層だけが投票しているのではないか、という懸念をなくさせることが肝要だと思います。→id:hatenadiary
(追記)
投票は4つの選択肢があってよい気がしました。
存続の方に高いウェイトをおくべきだという意見がかなり見られますが、単なる存続の他に条件付存続とも言える選択肢を導入すれば共存の余地はさらに増えるでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/sugio/20040630#p1
(追記の追記)
crowdeerさんのご指摘により、陪審制は多重アカウント対策にもなっているということに思い至りました。
仮に陪審員名簿にプールされているユーザが25000人居り、一回の審議で召集される陪審員の数が100人だったとしましょう。ここで、k個の多重アカウントを持っている人が一つの案件につき多数の投票権を得る確率を計算してみてください。分母が大きい(25000人の中から100人を選ぶ場合の数を考慮せよ。)ため、一つの案件に対し多重アカウントの保持者が複数の投票権を得ることは現実問題無視できるような確率でしか起こりえません。仮にk=10だとしても、ものすごく小さな確率になります。
一方、現在の制度を考えてみてください。これだと、crowdeerさん御指摘のように、多重アカウントで複数の投票権をえることがきわめて容易にできてしまいます。
ゆえに、どちらが多重アカウント対策に優れているか、再考する余地はあるのではないでしょうか。
ttp://d.hatena.ne.jp/crowdeer/20040630#1088567009
現在、はてなダイアリー市民として見なされているのが「ユーザー登録を行ってから本日までの日付で30日分以上の日記を登録している」「最も最近に登録された日記が過去30日以内のものである」の二条件だけだからただ単にメモ代わりに使っている人でも簡単に市民になるわけで。そんなキーワードについて一から十まで把握してはてなダイアリーを使用している人なんて一欠けらだと思う。ただ周りには気にして使っている人が多く見られるようだが。それもまたよし。
蛇足ながら、
今まではてなのシステムについてな〜〜んも考えていなかった人に急に「あなた、陪審員に選ばれたんでこの件についてよろしくお願いします」と言われても「はぁ?」となるだけだし^^;<無作為に市民抽出
は、陪審制が抱える根本の問題です。これは
今まで殺人犯の量刑についてな〜〜んも考えていなかった人に急に「あなた、陪審員に選ばれたんでこの件についてよろしくお願いします」と言われても「はぁ?」となるだけだし^^;<無作為に市民抽出
としても文章の意味が損なわれないことからも明らかです。crowdeerさんのおっしゃるとおり、「はぁ?」となるのが普通の反応でしょう。しかしながら、実際に、陪審制を裁判で用いている国々があるという事実を無視するべきではありません。これは、国民の良識への信頼があるからに他なりません。わたしは、はてなの良識を無邪気にも信じているのです。この件については、http://d.hatena.ne.jp/yukatti/20040629#p2もご参照ください。
今まではてなのシステムに
(略)
それもまたよし。
については、はてなのユーザの判断力ををあまりに甘く見すぎているのではないでしょうか。キーワードについて四六時中何か発言しているような人たちでないと、存続について正しい判断が下せない、とはわたしは思いません(<むしろ、わたしのようにキーワードについて四六時中何か言っている人たちに判断させる方が危険ですよ。それは一般の人の意見と乖離することも十分にありえますから。)。もちろん、わたしのように無邪気に信頼するのも危険なのですが。