ノイズ 〜 自動制御用語「悪魔の辞典」 〜 

ノイズ 〜 自動制御用語「悪魔の辞典」 〜  fujix(19431012)

 仕事をしているそばで、くだらない話をぺらぺらやられると本当にいらいらするものだ。アメリカの物理学者クロード・シャノンの通信理論によれば、ノイズとは「元の情報が相手側に正確に伝わることを妨げる存在」としている。これによれば、ノイズによるいらいらが問題ではなく、ノイズが思考だとか、仕事を正確にできなくすることが問題であることになる。

このようなノイズの影響を少なくするため、シビアさを要求される情報系では、難しい言葉だが「冗長度」を高める必要がある。すなわち同じ情報を2度送るとか、違う情報システムを併用するとかがそれに当たる。当然ながら手間とか金が余計にかかりシステム全体の効率が落ちることになるのだが、それはしょうがないと考える。

しかし、ノイズが必ずしも有害ではないという説が最近の情報理論では有力である。

そう言われてみると確かにそうかもしれない。暗い部屋を描いた重厚なタッチの昔の有名な名画を調べたら、実は長年の“汚れ”が絵の表面にこってり付着しており、本来は明るい部屋を描いたつまらないものであった、という話を聞いた。なんのことはない。名画を鑑賞しているつもりで汚れ(ノイズ)を見ていたのである、人間を判断する基準になる外観も実はノイズだらけかもしれないし、存在そのものがノイズである人間もいるかもしれない。

 以前、ゴミを掃除するロボットをある会社が制作したが実はなにがゴミでなにが大切な物かをロボットに教えるのが難しくて商品化出来ない、という話を聞いた。なにをもってゴミと判断する基準が難しいし、もっと言えばないのである。

 同様にノイズも個人差、人種によっても受取りかたが異なるため完ぺきな定義は不可能のような気がする。バイオリニストの巌本真理が音楽以外に一番好きなのは雷の大音響だというのだから。