情報の非対称性の解消。

http://amrita.s14.xrea.com/d/?date=20031016#p01

知財関連市場の難しさは中古車市場の難しさとよく似ている。

中古車売り場に行ってみよう。我々はありとあらゆる種類の車を見ることができる。しかし、その中でどれがよい車かどうか見極めるのは簡単な話ではない*1。たとえば、見栄えがすごくよい車があったとしても、それは事故にあったがために改装したせいかもしれない*2

それと同じことが知財にも起こりうる。つまり、おいしそうな知財知財ゴロがついている可能性を誰も否定できないのだ。

このようなとき、人は防御的な行動をとりがちになる。つまり、「はずれくじ」を引いてしまう可能性を織り込んで評価しようとする。そうすると、同じ値段でも、よいモノには安すぎる値段が提示され、悪いモノには高すぎる値段が提示されるということが起こる。よいモノを持つ人は提示された価格に満足せず、あえてそれを手放そうとはしない。また、悪いモノを持つ人は喜んで取引に応じるだろう。結果として、世の中には悪いものがあふれてしまうことになる*3

これが情報の非対称性がもたらす悲劇である。情報が完全ならば、良い車は良い車、悪い車は悪い車として別個の評価額が与えられ、円滑に取引が進んだはずなのに、情報が売り手と買い手で非対称になっているがために、本来望ましい均衡に到達できないでいる。

しかし、中古車の例を見ると現実はそうはなっていないことがわかる。これは「保証」システムの存在による。3ヶ月以内での無償交換に応じる、という風な約束をすれば、消費者は悪い車だとは思わないだろう。そういう風にうまくシグナルを送ることで、悪い均衡に陥ることを防いでいる*4

知財にも同じ枠組みが適用可能なのではないだろうか、という提案がある。→http://amrita.s14.xrea.com/d/?date=20031016#p01

もしかすると、これは知財ゴロを除いて誰もが得をする案なのかもしれない。

*1:ref: http://www.kanlema.com/inpaku/02mita/mit-077.html

*2:ref: http://commerce01.doshisha.ac.jp/parent/no27/futamura.html

*3:ref: http://kudou.s22.xrea.com/term/term3a4.html

*4:このシグナルが有効性を持つのは、相応のコストがかかっているから、である。コストの負担無く送れるシグナル<cheap-talk>には、このような働きを期待することは難しい。